2015年08月10日

日本美術のおいしいとこがギュッ!「国宝 曜変天目茶碗と日本の美」

サントリー美術館「国宝 曜変天目茶碗と日本の美」展プレス内覧会に行ってきました。
茶碗に興味ないよ、という人もぜひご注目。まさに日本の美の宝庫となってました!
(写真は特別に許可を得て撮影)

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この空間づくりに学芸員さんの意気込みを感じます


いきなり快慶

展示の最初は仏像でスタート。興福寺の《千体聖観音菩薩立像》の奥にいるのが、快慶作の《地蔵菩薩立像》。
彩色や截金文様の状態が非常に良いんですが、これも当初のものだそうです。ここまで残っているのは奇跡的です。

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奥に見えるのが快慶仏

今回の展示は、大阪の藤田美術館の所蔵品を展示するものでして、展覧会の主役は明治初期に実業家として成功した藤田傳三郎さんです。
明治維新で西洋文化がもてはやされると、日本の美術は一気に顧みられなくなり、とくに打撃を受けたのが仏教美術と茶の湯。
風前の灯だった両文化。仏像や茶道具の数々を廃棄や散逸から救ったのが、藤田さんなんだそうです。しかも私費を投じて。明治のお金持ちはやることが違いますね。平成のお金持ちさんももっと文化に投資してほしいです。できたら三味線の音楽なんかもどうですか。私がいつでも出向きますんで(すみません個人PRでした。笑)。

明治のころは「廃仏毀釈」と言って、仏像が破壊されたり海外へ売り飛ばされたりした時代。藤田さんのやられたことが今になって効いてきてますね。

このほかにも、奈良時代(!)の写経に千利休の手紙(茶掛けに表装)、伝 紀貫之の美しい散らし書き《寸松庵色紙》もありました。
後期展示には《紫式部日記絵詞》が登場。
まさに、日本の美術のおいしいエッセンスがつまっている展示内容ですね。

そして、展示は茶碗と茶道具に移ります。


茶碗のどこがおもしろい?

筆者の専門が仏像なので、ここの読者も仏像ファンが多いかと思いますが、茶碗はどうですか? 茶碗もいいもんですよ。

仏像は、平たく言えば「キャラ」の集まりで、コワモテもいればカワイイのもいたりして、キャラの背後にあるドラマが楽しい。

茶碗は、まずそのフォルムそのものの妙を楽しむ、というのが基本じゃないでしょうか。
ちょっと現代美術を見るような気分に近い気がします。抽象表現主義とか「もの派」とかそういう世界観に近い。

茶碗のみどころたくさんありますけど、まず茶碗の中の、お茶が入る部分「見込み」をのぞき込む。つぎに側面の形を見る。高台のぐあいも見どころのひとつ。あとは表面の質感などなど。

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脳内に流れるBGMは”2001年宇宙の旅”のあの曲・・・

さて、今回の展示では、《大井戸茶碗 銘 蓬莱》が見られたのが、私としてはよかったです。
以前、他の展覧会で大井戸茶碗の国宝《喜左衛門》を観賞できたので、ほかの大井戸茶碗にもお目にかかりたかった。念願かないました。
大井戸茶碗とは、写真のような感じで、ホント平たく言うとご飯茶わんみたいなやつなんですけど(実際、もともとは食事用の碗だったのを茶人が重用したらしい)、実物をみるとなかなか存在感があるんですよね。

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今回展示の《蓬莱》も、吸い込まれるような見込みの深さ、側面のキリッとしたフォルムの美しさがあり、堂々としてはいるんだけど、いっぽうで全体に醸し出す柔和な感じもある。
どこかおっとりした女性のような印象で、私の個人的なイメージでは、着物姿でかいがいしく働く、老舗旅館の若女将みたいな印象なんですよね。
って、茶碗も結局キャラ化しちゃってますね(笑)。まあともかくそういう楽しみ方でいいと思います。

こうした話は、ホント実際に見ないとわからないです!
今まで興味なかった人も、この機会にぜひ。
ほかにも、ゆがんだ形の沓形茶碗、手びねりの楽茶碗もあります。

また、茶碗以外の茶道具では、《田村文琳茶入》がすごくよかったです。もしできれば、他の人のじゃまにならないよう、しゃがんで、茶入の側面から鑑賞してみてください。「りんごのような」と解説があるように、きれいな丸みの形がカワイイですよ。いつまでも眺めていたくなります。

そして、展覧品の主役はやっぱり《曜変天目茶碗》。どこか遠い宇宙の星雲を見るような、深遠な美しさ。
「曜変」とは、器にかけられた釉薬の表面に、星のような斑紋が表れること。その作り方は不明。
この曜変が表れた茶碗は、世界に3碗しかなく、しかも茶碗側面にも曜変がみられるのはこれだけ、という、その貴重さ珍しさのレベルも宇宙的であります。

担当された学芸員さんも「まさか私がこの茶碗を扱うことになるとは」と興奮ぎみでした。

この茶碗は、曜変が出た黒い釉薬が全体に厚くかかっていますが、下部の高台部分は素地があらわに見えていて、そのチラリズムがまたなんともセクシーで(笑)、いいんですよね・・・。そこもお見逃しなく。

写真は美術館のサイトにありますが、これで見たつもりになってはあまりにももったいない。
ぜひ足を運んで自分の眼で観賞することをおすすめします。

(ちなみに撮影者は、以前このサイトで仏像写真展を紹介した三好和義氏)。

最後に、日本の美術を守ってくれた藤田さんありがとう!


藤田美術館の至宝 国宝 曜変天目茶碗と日本の美
2015/8/5(水)−9/27(日)
火曜日休館(9/22を除く)
サントリー美術館にて
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_4/
美術館サイト
http://suntory.jp/SMA/


 
posted by 宮澤やすみ at 16:49 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする