2016年06月22日

アイドル上京!「ほほえみの御仏 二つの半跏思惟像」展

あの子が東京に来てますよ!
東京国立博物館の「ほほえみの御仏」展が始まりました。
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影)

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半跏思惟像を、報道陣が取り囲む

韓国を代表する像と、奈良の中宮寺の像、ほかはゲストなし。
この2体だけで特別展をやるという、いさぎよさ。
この二人だけで場がもっちゃうんですから、その人気者オーラすごいです。

視線を集める”プロのポージング”

ぼくら日本の仏像ファンとしては、やはり中宮寺のこの方を360度ぐるぐると舐めるように見ることができるのは、うれしいことですよね。
後姿、こうなってたんだー!と、感慨ひとしおです。

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間近で見ると興奮もひとしお

世間から「ウルトラマンの原型」だの「浅田真央ちゃん」だの、好き勝手に言われてますが、まあ裏を返せば、それだけ親しまれている証拠。

展示タイトルにもある「ほほえみ」。本当に微妙なほほえみで、その口元にかる〜く中指をあてるポーズはあまりにも有名。もし人間の女子がインスタグラムでこのポーズをしたら、頬に押し付けちゃうんじゃないでしょうか。もしくはカメラを前に緊張して手がぷるぷるしちゃうとか。
そこいくと、さすが仏像。絶妙〜な加減で、絶妙〜な位置に指をあててるんですよね。

あとは、背筋がのびているのも特徴。
身体全体の前傾姿勢がほどよくて、シャンとしてます。
もし普通に「う〜ん」と考え込んだら、もっと前傾するでしょうに。

自然体のようでいて、きっちりポーズをキメている。しかもおだんごヘアですもん。これはなかなかのやり手ですよ(完全に妄想入ってます)。
ひとくちに言えば、この中宮寺の像は「人に見られ慣れてる」。
みんながジロジロ見ても涼しい顔(妄想です)。
ふつうの人間ではこうはいきませんね。

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ふたりとも向き合いながら、考え中(笑)

クスノキは信仰の証

このお像、お寺では長く如意輪観音菩薩として礼拝され、今も御朱印には如意輪観音と書かれます。しかし、現代では半跏思惟の姿は弥勒菩薩を指すというのが一般的。(中宮寺のWEBサイトでも、以前は「弥勒菩薩」の表記がありましたが、今は「菩薩半跏像」になってます)
まあどっちにしろ、美しく貴重な仏像であることは確かです。

この時代の木像はクスノキが主流(広隆寺の像はアカマツですが)。
筆者の先輩の宗教学者の先生によると、古代人はクスノキに神性を見出したそうです。神道では奇瑞を示す神の魂を「奇魂(くしみたま)」と言ったりします。
クスノキは、もともと神が宿る木という意味で「奇木(くすのき)」と言われたそうで、要するに霊木。当時は外来の宗教だった仏教も、こうした考えから奇木を使って仏像を造ったようです。

中宮寺の像は、独特な寄木造り(よせぎづくり:小さな部材を組み合わせて像を造る技法)をしているのも特徴。
ふつう、寄木造りというと、平安時代後半に確立したシステマティックな技法が知られますが、飛鳥時代にもあった。
しかし、確立したノウハウは無かったようで、だいぶ無理して木の小片を挟み込んで、釘をいっぱい打ち込んで、なんとか造り上げたそう。
それもこれも、絶妙な腕の角度や首の位置、完璧なフォルムを造りたい!という強い意志があったんでしょうね。ノウハウが無くても、前例が無くても、当時の仏師さんが理想をめざして、相当な試行錯誤を乗り越えたんでしょう。
何日も自宅を開け、給料は雀の涙、女房にはあきれられ、娘にも嫌われた。それでも理想の作品のために、人生を賭して、クスノキと格闘する仏師・・・(また妄想入ってます)
そんな仏師の努力を想うと、胸が熱くなるのです。

三国時代と飛鳥

一方の、韓国の仏像、国宝78号像もみごたえたっぷりです。
謎めいた冠装飾、衣のきっぱりと力強い線描、後ろにたなびく羽衣の斬新な表現など、
古代の美しさにあふれています。
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韓国国宝78号半跏思惟像

日本で知られているのは、この像と並ぶ国宝83号像がありまして、よく京都・広隆寺の像とそっくりと言われます(Wikipédiaとかに出てます)。
今回の国宝78号さんは、有名な83号さんよりも少し古い様式だそうで、出自も不明で謎めいた感じが良いです。
当時の朝鮮半島は「三国時代」といって、高句麗、新羅、百済の三国があった。
日本も、この三国といろいろ貿易やら戦争やらあったそうで、わりとぐちゃぐちゃややこしい時代なんですね。
だから、展示の仏像がどの国で造られたのか、よくわかっていません。
図録を読んでも、衣文のデザインが百済っぽいとかあるものの、不明だそうです。

古い古い時代の遺物に、明確な情報が無いことがふつうですから、ぼくら鑑賞者は、歴史ミステリーとして想像をふくらませて楽しむのがよいと思います。

いつになってもインポートブランドが好きな日本人

飛鳥時代の日本(倭国)は、国際交流の時代。
こうした朝鮮半島や、その背後にある中国(南北朝、隋、唐)と盛んに交流して、当時最新トレンドだった仏教を取り入れた。

それまで日本に無かったお寺とか仏像が出来て、日本の人はきっとびっくりしたでしょうね。
東京・お台場に自由の女神が置かれて、デートスポットになるのとはわけがちがう。
明治初期に、馬車に代わって、巨大な黒い機関車が煙上げて線路を走ったのと、衝撃度は似ているでしょうか(よくわからないけど)。

仏像も鉄道も、当初は衝撃的な外来文化だったけど、次第に「ふつう」になっていく。
日本人は、いつになっても外来物が好き。しかもそれを、あたかも日本に昔からあったかのようなレベルまで、消化していくという、不思議な国であります。

今回の展示、短い期間なのでご注意を。

特別展 ほほえみの御仏 二つの半跏思惟像
2016年6月21日(火)─2016年7月10日(日)
東京国立博物館 本館特別5室
展覧会サイト
http://hankashiyui2016.jp


























posted by 宮澤やすみ at 16:19 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月13日

この日だけ撮影OK!粋なはからい「ポンピドゥーセンター傑作展」

上野で開催中の「ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―」ですが、6月17日(金)と24日(金)の夜間(18:00〜20:00)に限り、カンディンスキーの絵の前で撮影OKになるそうです。
題して「フライデー撮影ナイト」!

最近では、撮影コーナーを設ける美術展が増えましたが、ホンモノの絵を撮影できるのはめずらしいと思います。
やっぱり、観に行ったらなにか撮りたくなるし、主催側としても、撮影してSNSにアップしてもらうのが一番の宣伝になりますもんね。両者の思惑が一致しました(笑)

展覧会は、20世紀美術を振り返るもので、1906〜1977までのタイムラインを1作品ずつたどっていくという展示。
タイトルどおり、ピカソ、マティス、デュシャン(便器を出品しちゃう)、クリスト(なんでも包んじゃう)などなど有名どころがずらり。
金曜夜に、行ってみてくださいませ!
(フラッシュ撮影、三脚や自撮り棒の使用はNGだそうです)

詳細情報↓

ポンピドゥー・センター傑作展―ピカソ、マティス、デュシャンからクリストまで―
2016年6月11日(土)〜9月22日(木祝)
東京都美術館 企画展示室
休日:月曜日、7月19日(火)
※ただし、7月18日(月祝)、9月19日(月祝)は開室
9:30〜17:30 ※毎週金曜日は9:30〜20:00
展覧会公式サイト:
http://www.pompi.jp/
 
posted by 宮澤やすみ at 13:45 | Comment(1) | 現代美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月07日

貴族にお呼ばれ? バロン住友の美的生活-美の夢は終わらない

六本木アークヒルズにある泉屋博古館分館にて「数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ」展の内覧会へ行ってきました。
(写真は許可を得て撮影)

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”オールスター!茶入大感謝祭”(笑)

ここは、財閥・住友家が集めた美術品を集めた美術館で、本館は京都にあります。
住友家第15代当主、住友春翠さんは公家から住友家に入ったお方。通称「バロン住友」。美術の収集や美術家の育成にも力を入れたそうで、西洋東洋の美術品のほか、中国青銅器のコレクションが特筆されます。

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「バロン住友」こと住友春翠氏の肖像

その収集品をご紹介しようというのがこの美術展で、前回の第一部(西洋美術)につづき、今回は和の美。
軸もの、屏風も立派でしたが、私としてはやっぱり茶道具に目が行きました。

西洋美術好きの春翠さんがお茶に凝ったのは、50代以降のことだそうですが、小堀遠州の好む「きれいさび」の世界がお好みのようで、小ぶりでかわいい品が並んでました。
現代で言うと、女子好みというか、キュンとくるというか(笑)、そんなイメージなんですかね…。

井戸茶碗には、国宝にもなるくらい威厳のあるフォルムがよくありますが、ここにある《小井戸茶碗 銘「六地蔵」》なんか、かわいいですよ。広がりをちいさくまとめて、その分深さがあり、側面の釉薬の模様がちょぼちょぼついて、全体的になんとも上品、かろやか。やっぱり貴族の方はこういうのがお好みなんですね〜。

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大きな画像は自粛。美術館のサイトできれいな画像が見られます

その横には、表面がざらついた《黄伊羅保(きいらぼ)茶碗》というのがあり、説明によると、
”伊羅保の名は、その手触りがいらいらするところからつけられたとも”
おいおい笑。そんな由来! イライラするって!!笑
思わず、いとうあさこの朝倉南のネタが思い浮かんだ次第です。

※井戸茶碗については、当サイト前記事参照ください。
 「国宝・曜変天目茶碗と日本の美展」

茶入れは名物のコピーがずらり(冒頭写真)。茶入れは、その形によって「文琳」(リンゴのこと)とか、「阿古陀」(かぼちゃのこと)とか、「茄子」とか呼び方があるんですが、その典型例が並んで、とてもわかりやすいです!

ほかにも、写真は載せないけど、釉薬の景色がうつくしい茶入の名品や茶碗。そうかと思えば、比叡山延暦寺で使っていたという重厚武骨な茶釜だけは男性的な存在感がありました。

なんだか、バロン住友さんの人となりを(勝手に)想像しちゃいますね。女性的で上品な路線が多いとはいえ、ナヨナヨした感じは無いのであります。

さらには、ディナーセットや、邸宅の写真などもあって、
は〜貴族のくらし、ステキですワねえ〜
と、なぜかマダム口調でうっとりしちゃうひと時でありました。

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旧邸のふすまの意匠図。モダンだなーと思いきや、法隆寺伝来の古代裂文様。は〜もうどこまでもオシャレ

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実際に使っていたディナーセット。「ダウントン・アビー」の世界だね

さらに、後期展示では、いま大ブレイク中(?)の伊藤若冲の絵も展示されますよ。
ここは5時間も並びませんよ(笑)!

帰りはアークヒルズでゆっくりお茶して帰りたい気分になります。私はこの日頭痛がひどかったのですぐ帰りましたが。

さて、貴族のコレクションを自宅(跡地)で公開という、「邸宅美術館」は各地にあります。
当サイトでもミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展を取材しました。
 結局ルネサンスって何? ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展

あの展示は、膨大な展示物が時代別に体系づけて整理されて展示していて、個人コレクションと思えない充実ぶりでした。
今回は、正直言ってそこまで体系だった展示ではなく、良くも悪くも「住友さんのお宅のお宝拝見」という感じになっています。
まあ、博物館ではないので、これで充分楽しめるものではありますけどね。(いつか充実の青銅器コレクションを見てみたい)
気楽なおでかけの時にふらっと楽しむにはよいと思います。

ちょっとイイとこのお家にお呼ばれされた気分で、訪ねてみては。

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都心と思えない静けさ


住友春翠生誕150年記念特別展
バロン住友の美的生活 ―美の夢は終わらない。
第2部 数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ

2016年 6月4日(土)〜8月5日(金)
(7月5日より展示替え)
泉屋博古館分館にて
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/information.html
 

posted by 宮澤やすみ at 18:42 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする