2018年10月15日

東西アート革命「マルセル・デュシャンと日本美術展」

「マルセル・デュシャンと日本美術展」に行って来ました。

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一番有名(?)な作《自転車の車輪》
1964複製/オリジナル1913


トイレの便器に、サインを書いて
「これでもアートなんだぜ、どうよ!」
と、したり顔で展示して、美術のコンセプトをひっくり返した人が、マルセル・デュシャンさんです。

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作品づくりにまつわるメモや複製をパッケージにまとめる仕事もした

デュシャンは20世紀初頭に、まず画家としてスタート。
キュビズムに影響された絵画作品を多く描きますが、すぐ画業をあきらめてしまいます。

「もう画家や〜めた」っていった先から、デュシャンの仕事が始まるわけですが、
対象を分解して再構成するキュビズム絵画と同じように、アート全体もぶっ壊した張本人なんですね。
ほかにも、急に女装して「ローズ・セラヴィ」という架空キャラを演じたり。これって、友近が水谷千重子やるのと同じ?ですよね。

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レディメイド作品の代表。しかもサインは"M. Mutt”という偽名!
《泉》1950複製/オリジナル1917


「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」
という作品も登場。このタイトルを読んでから作品を見ると、性的なモチーフが見えてきます。
便器の作品は「泉」。
こんな感じで、言葉と作品の密接な融合も、デュシャンの作品によくみられます。

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《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》
1980複製(オリジナル1913-1923)


そんなふうなコンセプトをもとに、「日本美術」を見てみよう、というのがこの展覧会のミソ。

いきなり出てきたのは、楽茶碗。

今でこそ高級な美術品というイメージですが、制作当初はかなりパンクなアイディアから生まれました。
金ぴか豪華主義の桃山時代に、真っ黒な手捻りのヘンな茶碗を持ち出した衝撃たるや相当なものだったはず。
このサイトでも、以前わたくしこんなふうに紹介しました↓
「利休と楽は美術界のとんだパンク野郎」
「桃山美術界に殴りこんだ”反逆のアート”」
「楽茶碗はアバンギャルドの極致?『茶碗の中の宇宙』展」アートウォッチャーより

こういう考え方が、楽茶碗にはあるんですね。
そことデュシャンとを、だいぶ強引ですが結び付けてみたよ、という展示です。

そのへんにあった竹を切っただけの花入れが「美」とされるのも、デュシャンの《泉》と通じる?というわけ。

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展示後半は日本美術《竹一重切花入 銘 園城寺》伝 千利休

奇しくも、先日はサザビーのオークションで1億5000万円で落札されたアート作品が、その瞬間に断裁されるという「事件」がありました。
投資の対象になっているアートに疑問をなげかけるパフォーマンスでしたが、これのおかげでかえって価値が高まっちゃうという、ヘンな矛盾が起きてます。
デュシャンも、美術を壊した仕事のおかげでかえって現代美術のスターとして扱われています。

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書=ことばと作品の融合を、デュシャンの言葉遊びとつなげてみる
ーー《舟橋蒔絵硯箱》本阿弥光悦


ちょっとこじつけ感もありますが(笑)、それでも最近は東洋と西洋の美術の共通点を探る行為もよくありますし、わたし自身も運慶を「仏像界のルネサンス」と言ったりしてますので、今どきの美術評論の潮流なのかなと思います。

そんなふうに、時間も空間も超越して横断的に美術を楽しもうよ、という思いが伝わってくる展示です。



東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
【マルセル・デュシャンと日本美術】
2018年10月2日(火)〜12月9日(日)
東京国立博物館・平成館特別展示室第1室・第2室
公式サイト
http://www.duchamp2018.jp

posted by 宮澤やすみ at 23:32 | Comment(0) | 現代美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月08日

担当はストーンズファン?キャラ立ちが楽しい大報恩寺展

トーハクで開催「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展が始まりました。
写真は報道内覧会での取材風景です。

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なんと秘仏本尊の釈迦如来もお出まし!

京都で応仁の乱にも焼けず残った大報恩寺。別名は千本釈迦堂。
仏像好きなら京都でぜったいはずせないお寺です。
快慶、定慶(肥後定慶)という、慶派のスターが腕をふるった仏像群が、東京にお出ましになりました。

まずはともかく、今回は図録のカバーデザインがすばらしいです。
カバーに、主役の仏像たちの顔、顔!
顔立ちだけでも、一人一人の個性が見えてくるようです。

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このデザイン、どこかで見たような・・・?

これを見ると、このバンドの絵面を思い出します。

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ローリング・ストーンズのアルバム『Black and Blue』

想像ですけど、図録のデザイン担当者は、ローリング・ストーンズのファンなんですかね。話が合いそうです。

ちなみに、ミック・ジャガーの位置で正面を向いているのは「神通第一」と称される目犍連(もっけんれん)さんです。
どちらの写真も、メンバー一人ひとりの際立つ個性を、一枚で表現した珠玉の写真です。

で、このおじさんたちの写真は、有名な快慶作の十大弟子というもので、たんなるおじさんの群像(笑)と思ったら大間違い。
釈迦の直属の高弟とされ、それぞれキャラが立ってます。
一人ひとりが独自の能力を発揮する超人なのだ!(詳しくは展示をご覧あれ)

続いて、美しい六観音が登場。肥後定慶という仏師の作。
いまから約800年前、鎌倉時代、有名な運慶の後を担う慶派仏師のスターが造りました。

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仏像ファン垂涎の六観音

よく慶派の仏像は写実的と評され、この像もそうなんですが、よく見ると、この鎌倉時代よりさらに300年以上さかのぼる、平安時代前期の古仏に寄せて作られているようにも感じます。
以前、「仁和寺展」で見た、道明寺の十一面観音像(この連載でも書きました)のような、うねるようなドレープの衣の表現が、大報恩寺の六観音の衣にも見られるんじゃないでしょうか。
一番特徴的なのは、十一面観音のスネのあたりです。
その部分の衣文の襞が、太い襞、細い襞と交互に表現されていて、これってまさに平安時代初期の様式じゃないですか(「翻波式衣文」といいます)。
写真掲載できないので、ぜひ展示室で確認ください!

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こちらは千手観音の横から姿

ぼくのような天平〜平安初期の古仏ファンは、「翻波式衣文」が大好物。
室生寺とかに行くと観られる様式です。
肥後定慶さん、こうした仏像の古典をちゃんと勉強しているんですね。
パクリとかマネなんかじゃなく、これこそ「リスペクト」というものです。


ところで、本展の関連イベントとして、「JAZZと声明の調べ」など音楽イベントがあるそうですが、
なんでこういうときに我々The Buttzを呼ばない〜!
せっかく仏像バンドという活動をしているのですから、こういう時はぜひ呼んでほしいなあ。アコースティック編成も可能ですし。
今後仏像寺社系イベントをご担当される方、よろしくお願いいたします!


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特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
2018年10月2日(火) 〜 2018年12月9日(日)
東京国立博物館 平成館 特別展示室第3室・第4室
公式サイト
https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/


※この記事は、仏像ワールドWEBサイトでの連載「宮澤やすみの仏像ブツブツ」の記事を転載しています。


posted by 宮澤やすみ at 12:43 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする