2019年03月20日

「チューリップ時代」の深い意味−トルコ至宝展−

「チューリップ時代って何よ」
と一人でツッコミを入れたのは、世界史の受験勉強のとき。
参考書の近代の章は戦争の記事だらけの中で、イスラム世界の短い解説に突如現れた「チューリップ時代」という、妙にハッピーなワードがものすごく引っかかったのでした。
以来、オスマントルコといえば「チューリップ時代ってのがあるんだよ」という認識だけで日々人生をすごし、数十年。やっとその真相に触れる日が来たのでした。

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全体にチューリップ柄があしらわれたカフタンという装束。スレイマン1世(在位1520-66)がお召しになったもの
写真は報道内覧会で許可を得て撮影


今回の「トルコ至宝展」では、歴代のスルタン(オスマン帝国の皇帝)が残したお宝を展示。
きらびやかな宝飾、衣装、調度品。トプカプ宮殿の美は、ヨーロッパとアジア(中国、日本も)の両方からよいものを集めて独自の美意識でオスマントルコの世界観が展開されます。

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《宝飾兜》16世紀後半。軍隊の習慣として、兜の前立てをスプーンとして使った例もあったそうですが、この《宝飾兜》はさすがにそういう使い方はしません。あくまで防御板であります

世界史で「チューリップ時代」というのは、18世紀の国内安定期にヨーロッパと良好な関係を保った時のことを言い、そのときにチューリップが流行したことからこの名称がついてます。

ただ、オスマントルコにとってチューリップは昔から非常に重要な花だったようです。
トルコの言葉でチューリップは"Lâle"(ラーレ)といいます。これをアラビア語で書いて、そのつづりを並べ替えると、なんと「アッラー」となるんだそうです。
ほかにもアラビア語の数秘術からもアッラーに通じ、さらには「チューリップは一つの球根から一つの花が生じるため、イスラーム信仰における神の唯一性(タウヒード)を示唆すると解されました」(展示パネル解説文より)とのことから、チューリップは宗教的な面でも非常に大事な花なのでした。

仏教だったら蓮、キリスト教だったらユリ、といった位置づけでしょうか。

これで、私のなかで「チューリップ時代ってなんだよ」の疑問が解け、スッキリしました。
戦乱ばかりだった近代の、つかの間の平和が「チューリップ時代」。人の一生もトラブル多いものですが、自分なりの「チューリップ時代」を求めていきたいと思うのでした。

展示は最後まできらびやかな美に浸り、贅沢な時間を過ごせます。

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アラビア書道のコーナーは、宮殿の部屋に入ったかのようなしつらえ

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展示室のしつらえもトプカプ宮殿を意識したのでしょうか。すごく凝った造りになっていて、テーマパークを訪れたようで楽しいです。


【トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美】
2019年3月20日(水)〜5月20日(月)
国立新美術館 企画展示室2E

(巡回)
京都国立近代美術館
2019年6月14日(金)〜7月28日(日)

公式サイト
https://turkey2019.exhn.jp/

posted by 宮澤やすみ at 15:06 | Comment(0) | ヨーロッパ(近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする