2012年10月23日

特別展「出雲−聖地の至宝−」レポート(写真あり)−その2 銅剣銅鐸、仏像、神像−

出雲大社では、60年ぶりに、本殿の修復と檜皮葺の屋根の葺き替えが行われています。その後にはご祭神を本殿に戻す「ご遷宮」もあり、これを機会にと開催されたのがこの展示です。

本館の2室を使って展示があります。
ここでは第2室の紹介をします(第1室の紹介は前の記事で!)。
※写真は特別な許可を得て撮影したものです。

第2室のテーマは出雲周辺の考古遺物と神仏像について。

1.「わざわざ埋める」その理由とは?
発掘調査で、出雲の地域は古くから人が集まって祭祀をした聖地であることがわかってきました。
どれくらい古いかと言うと、弥生時代。紀元前2〜1世紀というから、寺や神社はもちろん、古墳も卑弥呼サマもなかった時代ですよ。

そんな古い時代に作られた銅剣や銅矛(どうほこ)、銅鐸(どうたく)が、出雲の遺跡からたくさん発掘されました。その数358本。それまでに国内で見つかった全数を超える膨大な量が、一気にひとつの遺跡から密集して見つかったんだから、すごいですよね。調査担当のセンセー方もさぞかし興奮したことでしょう。
 銅鐸、金銅仏、神像
 銅鐸、仏像、神像が一堂に。なんてステキな、理想的空間!!

調査の結果、九州から近畿、東海までの地域で作られ、ここに運ばれたそうです。
各地で作られた当時貴重な銅製品、しかも実用できない切れない剣や矛が、わざわざここに運ばれ、わざわざ埋められた。この「わざわざレベル」はよっぽどのことですよ。大人気のどら焼きを求めてわざわざ上野「うさぎや」へ出向く程度の「わざわざ感」とはスケールがちがいます。「うさぎや」へ行くのさえ面倒がっていた自分が恥ずかしいです。
それはともかく、これだけ整然と銅製品が埋められたのは、なにかの儀式だったんじゃないかとかいろいろ推測されてます。

つまり、出雲という土地は、出雲大社ができるはるか以前から、「よっぽど」の土地だったんですね。古代出雲王権の存在を示唆する説もある。この後に覇権を握ったヤマト王権からすれば、かなりの先輩格です。「出雲の国譲り」神話を、出雲王権と、新興のヤマト王権との対立になぞらえると……古代史ロマンの興味はつきないですね。


2.怒りに開く神の眼
さて、第2室で目を引くのは、神像と仏像。ハイようやく私の分野に近づいてきました!
鰐淵寺(がくえんじ)に安置されている観音菩薩像。ああ!会いたかった仏像が今ここに!この細身のスタイル。真ん丸なお顔にかすかに笑う眼と口。細くシンプルなデザインの瓔珞(ようらく:アクセサリーのこと)。飛鳥仏ファンにはたまらないスタイルです。

金銅仏
つきだした口がカワイイ!

この仏像は、時代様式の変遷を見る好例です。細身の身体と、シンプルな瓔珞のデザインは、法隆寺に伝わる飛鳥時代真っ只中の様式。東京国立博物館の法隆寺宝物館に、最古の阿弥陀三尊像がありますが、そのスタイルに近い。

金銅仏
レトロスタイルの瓔珞がイイ!

しかし、顔つきは真ん丸でちょっと微笑み、鼻筋が通ってる。これはその次の白鳳時代。さらに、台座をごらんください。反り返った花弁に細かい飾りがついてエキゾチック。左右の腕から垂れる羽衣の形も注目。これは、薬師寺東院堂の聖観音菩薩に共通するデザインではないでしょうか。あの像は、白鳳期から次の天平にさしかかる頃の時代とされます(諸説あり)。

金銅仏
エキゾチックな台座デザイン!

だから、ここに展示されている鰐淵寺の像は、現代の目からするとただただ「古い」ですが、当時の目線で言えばレトロから最新モードまでが入り混じった独特のスタイルなのです。当時の都は飛鳥。都の最新情報が少しずつ出雲に流れてきたタイムラグから、このようになったんですかね。誰がどういう経緯で作ったのかわかりませんが、出雲の情報収集力に驚きます。

そして奥には神像がずらり。神の像に対してこんなこと言っちゃなんですが、カワイイ!
とくに左端の小さな像。10世紀のかなり古いものだそうですが、ちょこんと座って首をかしげてかわいらしいです。ただ、カワイイのは遠目に見ればの話で、近づくと表情は怖いです。横の男神像も仁王や神将像のように目をカッと開いて威嚇するようです。もともと、神は恐ろしいものなんですよね。恐ろしいからこそ丁寧にお祀りする。天神信仰や怨霊信仰なんかまさにそうです。

出雲 神像
なんかここにいていいんですかって感じ・・・

謎の神・摩多羅神(またらじん)もいます。大黒天と同じインドの「マハーカーラ」がルーツとかいろいろありますが、要するに恐ろしい破壊神、障碍神(しょうげしん:物事の邪魔をする)がルーツのようです。
それが、この像ではニタリと笑っていて、その笑顔がまた不気味この上ない。あんまり不気味なので写真を撮るのも遠慮しました。
僧形神と女神の像は、八幡信仰もさかんだったことを示しています。蔵王権現もいるし、もうホントなんでもありですね。

総じて、木肌あらわの素朴な像ですが、神の荒ぶる面を表現したような、一種近寄りがたいものがばんばん感じられました。

東京で開催された「特撮博物館」で上映された「巨神兵東京に現わる」という短編映画。ここでのセリフに
“恐れこそが神の本質だ”
という言葉がありました。これは、半分は当たっていると思います。人智を超えた圧倒的なものに対し、古人はひたすらひざまづき、捧げ物を奉納して祭り上げてきました。神への「恐れ」は「畏れ」として今につながります。

神さまの集まる出雲。弥生時代からずっと今まで、こういう神々、どっちかというと怖い方々を鎮めてきたんですから、大変な土地ですよね。きっと、古人たちは、神と向き合うときの本気度たるや相当なものだったと思います。あの銅剣の「ここまでやる?」的な埋納風景を見ると、その必死さが実感できます。出雲は荒ぶる神の封印なんでしょうか。ちょっとうす寒い感じも味わえる、そんな展示だと思います。


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■□■ 特別展「出雲−聖地の至宝−」 の開催概要 ■□■
会期:2012年10月10日(水)〜11月25日(日)
会場:東京国立博物館 本館特別5・4室 (東京・上野)
主催:東京国立博物館、島根県、島根県立古代出雲歴史博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
展覧会公式サイト:http://izumo2012.jp/





posted by 宮澤やすみ at 15:27 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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