2015年04月12日

「ボッティチェリとルネサンス展」アーティストとパトロンの運命

渋谷Bunkamuraミュージアムの「ボッティチェリとルネサンス展」を取材してきました。
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影。会期中は撮影禁止です)

今回の展示は、副題が「フィレンツェの富と美」とついてまして、たんなる美術展じゃなく、博物館にいるような気分にもさせられます。

一言でいうと、ボッティチェリを軸に、15世紀イタリアの華麗で激しい人間ドラマが見える、興味深い内容でした。

展示は、時間軸に沿って、ボッティチェリの「イケイケ期」と「ダメダメ期」に分かれます。
(スミマセンぼくが勝手に便宜的につけた用語です)


1.イケイケ期

まず展示の最初は、フィレンツェで鋳造された金貨。
カトリック都市のフィレンツェ。メディチ家は、高利貸を禁ずるキリスト教義に反しない形で、うま〜いこと金融業を起ち上げて、財を成したそう。
さらに、財を成した人は積極的に芸術に投資するのが美徳とされたもの(現代のお金持ちさんもこの美徳に倣ってほしい・・・)ですから、一気に芸術の街として発展するのです。
そこで大活躍したのが、サンドロ・ボッティチェリさん。

展覧会では、師匠から独立したばかりの頃から晩年までのボッティチェリ作品がずらり。「ひとつの展覧会で、ボッティチェリ作品が17点!」というのは、かなり珍しいことなんだそうです。

メディチ家の潤沢な資金をもとに、ボッティチェリさんは、メディチ家から作品制作を数多く受注。仕事に恵まれたアーティストはいいですね。まさに水を得た魚です。早くから名声も手に入れました。

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ピアチェンツァ市立博物館の館長さんが、館唯一のボッティチェリ作品「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」について熱く語る。ボッティチェリ愛がひしひしと伝わりました。

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”イケイケ期”の代表作《ヴィーナスの誕生》があまりに人気で、ヴィーナスだけ別に描いた作品もある(ボッティチェリ工房作)。まさに人気絶頂。




2.ダメダメ期

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壁の色がブルーに変わり、”ダメダメ期”を演出する工夫

”ダメダメ”というのは、ボッティチェリの生活を指しての言葉で、画力についてはまったくダメではありません。むしろイケてます。

さて、この展覧会では、ボッティチェリをとりまくキーパーソンを把握するとよいです。
メディチ家の繁栄を築いたコジモ・デ・メディチ
2代目のロレンツォ・デ・メディチ
そして、聖職者ジローラモ・サヴォナローラ。

こうした人物が、15世紀イタリアの歴史を動かして、ボッティチェリも時代に翻弄されるという、歴史ドラマを見ているような展示が展開されるのです。

というのも、コジモさんが築いたメディチ家の権勢ですけど、次代になると早くも反動があって、暗殺騒ぎなんかが起きる(ロレンツォの弟が刺殺)。
さらに、聖職者のサヴォナローラさんがかなり癖のある人だったみたいで、華美な暮らしに浸る風潮を批判して、フィレンツェの民衆をカトリックの教義で扇動。町の広場で絵画を焼くという行動に出ました(「虚栄の焼却」と呼ばれた)。

で、この「いかがわしいアートなんかいか〜ん!!」というサヴォナローラさんの教えに、ボッティチェリも傾倒しまして、「虚栄の焼却」のときは自分で自分の絵を焼いたとか焼かなかったとか。

メディチ家が追放されるとき、ボッティチェリは付いていかず、サヴォナローラの教えに生きる決心をします。これで仕事が激減。仕事が無くなったアーティストは悲惨です(自分の体験ですが)。どんどん自分の世界に埋没して、精神的な深みに落ちていきます。

ボッティチェリさんの場合は、それが悪い方向にいかないで、精神的に静かな境地を得たようです。その点はサヴォナローラさんによるキリスト教の信仰によるのでしょう。

こうして、ボッティチェリの晩年の作品は、過去の”イケイケ期”とは異なる静かで深みのあるものに変化します。
とくに人物の静謐な表情とか、落ち着いた構図とか、老成したボッティチェリ作品の魅力があります。
だから、”ダメダメ”といっても、芸術性の面ではより高いレベルに到達しているといえるんじゃないでしょうか。

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引き込まれる画面の《聖母子と6人の天使》


とまあ、絵画自体よりもそれを取り巻くストーリーに着目した記事になってしまいましたが、それだけドラマを感じさせる展示構成になっているのが、特徴だと思います。絵画そのものの美しさや劇的な世界観は、ぜひ会場で存分に感じてください。イヤホンガイドもあってわかりやすく理解できますよ。
ルネサンスというと遠近法とかスフマートとか、絵画技法がクローズアップされがちですが、今回はより当時の人間の息遣いが感じられて、ボッティチェリとメディチ家が身近な存在になりました。



【ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美】
Bunkamuraザ・ミュージアム
2015/3/21(土・祝)−6/28(日) 
*4/13(月)、4/20(月)のみ休館
特設サイト 
http://botticelli2015.jp/

 

 





posted by 宮澤やすみ at 19:45 | Comment(0) | ヨーロッパ(中世、ルネサンス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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