2015年04月22日

セザンヌ展 「押しの弱い男」がブレイクした理由

箱根のポーラ美術館では「セザンヌ展」が開催されています。美術館主催の内覧会「プレスデー」に参加し、取材してきました。
セザンヌは、印象派と20世紀美術をつなぐ役目となった、美術史上非常に重要な画家です。
それなのに、「ザ・印象派」モネと「帝王」ピカソの間に挟まれ、美術ファンの間ではちょっと影が薄くなりがち。もったいないですね。

絵画自身の存在感

さて、展示をみながら学芸員さんの説明を聞きました。
いろんなお話があったのですが、ぼくの印象に残ったのは「筆触」の話です。

cezanne2.jpg
担当学芸員の工藤さんが解説

学芸員さんによると、当時の画壇は荒々しい筆のタッチ「筆触」を残した画面が特徴だとのこと。
それ以前ですと、スフマートに代表されるように、筆の筆致を残すなんてありえなかった。
この「筆触」により、絵の価値が変わってきたようです。
絵具を塗るというより、盛り付けた筆触の陰影によって、絵画がたんなる2Dの平面作品ではなく、ある意味3Dの立体作品になってくるんですね。

当たり前の話ですが、絵を見るとき、絵に描かれている内容(人物なり風景なり)を見るのが当たり前なわけですが、この時代の絵画は、絵が「絵そのもの」の存在感を感じさせるんですよね。
もちろん、人物とか風景とかが描かれてはいますが、そうした対象を超越して、絵具と絵そのものが主張をしてきます。
こうした運動が、20世紀に入って、絵画の存在意義を根本から考え直すことになっていくんでしょうね。

cezannne3.jpg

ともかく、こうした絵の存在感は、印刷や画像ではぜんぜん伝わりません。いちど実物を肉眼で見るのがいいと思います。

近づいたり、遠くから見たり、斜めから見ると筆触の具合が見えますし、絵画鑑賞が楽しくなります。
展示室に入ると、美術館独特の絵具のにおいなんかもして、テンションがあがります。







箱根の自然に囲まれた快適な空間



ブレイクのきっかけはモネ?

で、セザンヌ展ですけど、彼を取り巻く同時代の仲間や先輩、師匠、そして後輩と、いろんな才能のぶつかり合いがみえて面白いです。
今回の展示で登場する人物を整理しましょう。

先輩:クールベ、モンティセリ、マネ
師匠:ピサロ
同僚:モネ
後輩:ゴーガン、ピカソ、ミロなど

そういう人たちの作品とセザンヌ作品が並ぶのですが、この人物関連からもセザンヌのおもしろさがわかるんじゃないでしょうか。

ぼく自身は以前からセザンヌが好きで、オルセー美術館でも長い間りんごの絵を眺めたものでした。

しかし、冒頭にも書きましたけど、セザンヌは、大人気のモネやピカソほどのインパクトがなく、一般の美術ファンにはセザンヌにあまり興味を示さない人もいるとか。ちょっと残念ですね。この時代のキーパーソンなんですけどね。

あえて事物の端を切り落とした変なアングルは、スマホで斜めに撮っちゃった写真にも見えて、その一瞬の美しさも感じるし、技法がどうこうという話を抜きにしても、もしセザンヌがスマホで写真撮ったらこうなるだろな〜と思うだけですごく親近感が湧きます。

Aポール・セザンヌ《砂糖壺、梨とテーブルクロス》 1893-1894年 ポーラ美術館蔵_s.jpg
ポール・セザンヌ《砂糖壺、梨とテーブルクロス》 1893-1894年 ポーラ美術館蔵

セザンヌはセザンヌで、ずっと画壇から離れて、裕福なお父さんから仕送りもらって描いてたというから、認められたい、稼ぎたい、という欲求が無かったんでしょうか。確かに、ピカソみたいなグイグイくるような押しの強さは無いですよね。

前に前に出ようとギラギラすることもなく、柳に風、暖簾に腕押し、ひょうひょうとした性格だったんでしょうか(勝手な想像ですが)。
そんな、作品の背景に存在する、ある種の押しの弱さゆえ、一般美術ファンに響かないのかもしれないですね。

こういう人っています。まあ私もそっちの部類に入る人間だと思うんですが・・・。
こういうタイプの人を代表して申しますと、
「ギラギラしない」人だって、認めてもらいたい願望はあるんです。でもそれを出すのがヘタ。こういう人を理解するには、相手のほうから一歩踏み込んでもらわないとダメ。
はい、めんどくさい人なんですこういうタイプの人って・・・。

セザンヌの場合、「一歩踏み込んでくれた人」がいた。それがクロード・モネ。
彼が、田舎にひっこんでいたセザンヌをもういちど引っ張り出して、個展を開かせたところ、一気にブレイクしたのでした。

モネの「踏み込み」がなかったら、確実に忘れ去られていて、20世紀美術の動きも変わっていたかも。モネさん、美術史上大事な仕事をしましたね。
いっぽうで、セザンヌの画力があってこそのブレイクだったわけですから、陽の目をみないアーティストも、日頃から研鑽しておかないといけませんね。

 
cezanne1.jpg
レストランでは「りんごの画家」セザンヌをイメージした特別メニューがいただけます
メニュー詳細(美術館サイト)



セザンヌ―近代絵画の父になるまで 
2015年4月4日(土)−9月27日(日)
ポーラ美術館にて
美術館サイト:
http://www.polamuseum.or.jp/exhibition/20150404s01/
展覧会特設サイト:
http://www.polamuseum.or.jp/sp/cezanne_2015/
 
 
 
posted by 宮澤やすみ at 12:39 | Comment(0) | ヨーロッパ(近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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