2019年07月16日

奈良のスター仏像が東京に|特別展「大和四寺のみほとけ」

先週から始まっているのが「大和四寺のみほとけ」展。
仏教伝来間もない飛鳥時代からの古刹に伝わる仏像がずらり。古代史ファン、仏像ファンともワクワクが止まらない展示になっています。

今回注目の四寺とは、長谷寺、室生寺、岡寺、安倍文殊院のこと。
仏像初心者の方も、どこかで見たことのあるはずの有名な仏像たちが目の前に。これは興奮しますよ。

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展示のようす。内覧会にて許可を得て撮影

展示室の右側にちょこんと座っているのは、岡寺の菩薩半跏像。1300年くらい前にさかのぼる大変貴重な古仏ですが、小さくて童顔でほんとうにカワイイ。

そして、展示室奥のステージに立つのは、有名な室生寺の十一面観音菩薩さん。
ふっくらほっぺに小さなお口。唇の紅がしっかり残っていて女性的な美しさなのですが、目つきは厳しく、胸板も男性的。しかし腰のくびれぐあいはなまめかしい、という、性別を超越した美しさが間近で堪能できます。
筆者もこれまで何度もお目にかかった美仏ですが、あらためて眼前にいると、その圧倒的魅力にクラクラしますね。

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室生寺の地蔵菩薩と十一面観音菩薩。光背の極彩色の絵がすばらしく歴史的にも貴重な史料となっています

ちなみに、以前はテレビ番組で、長谷寺と室生寺を案内させてもらいました(過去記事)。
その時は金堂内陣での撮影もあり、貴重な経験をさせていただきました。

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室生寺金堂にて。女優・相武紗季さんとの奈良聖地めぐりでした

しかも女優の相武紗季さんとご一緒でき、あのロケは私の人生のハイライトでした(笑)

それはさておき、大和四寺の展示です。
室生寺の仏像ではもう一体、国宝の釈迦如来坐像もお出ましです。鋭い衣文線に注目。
前回東京で展示されたときはガラス越しでしたが今回はガラス無し。裏側も見やすく存在感がダイレクトに伝わります。


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展示のようす。流麗な衣文線が美しい室生寺の釈迦如来坐像

長谷寺の仏像は、さすがに10mのご本尊はムリですが、こちらの十一面観音さんは、貫主さまの寝所に安置されている仏像。

安倍文殊院からは、本尊・文殊菩薩(快慶作)の胎内に収められていたという貴重な納入物が展示。


この四寺を軸に、基本をおさらいすると、仏教以前の日本、古代ヤマト王権の中枢は、奈良盆地の南端・三輪山が中心でした。
この山をご神体としてその西側に政治の中枢ができました。
箸墓古墳をはじめとする古墳群や、纏向遺跡で知られる場所です。

ここに仏教が伝来して、数々の寺院が建って、以降の歴史が動いていくのでありました。
安倍文殊院は、大化の改新があった645年の創建。岡寺も飛鳥の古いお寺。
長谷寺は、大和の政権中枢からみて三輪山の裏側、つまり東側に位置し、その先には伊勢神宮があるという重要地点です。
室生寺も大和−伊勢ラインの山中にある聖地がもとになって、寺院が開かれたのでした。

どれも、古い日本の時代をリードした重要な寺院です。

東京国立博物館の本館11室(正面入って右手)での展示です。



特別企画 奈良大和四寺のみほとけ
東京国立博物館 本館11室
2019年6月18日(火) 〜9月23日(月・祝)
詳細は東京国立博物館のHP
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1966
posted by 宮澤やすみ at 11:50 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

古代史ロマンティックが止まらない−特別展「出雲と大和」

気の早い話ですが、令和2年のビッグイベントは東京国立博物館の特別展「出雲と大和」。
先日記者発表会がありました。

島根県の出雲といえば、出雲大社を中心に興味深い神社だけでなく仏像も点在する寺社ファンにはたまらない地域。
今回の展示では、出雲大社のご神宝から、地域で発掘された銅剣、銅鐸、銅矛など、古代祭祀の遺物がずらり。古代史ロマンの世界を堪能できます。


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報道資料をいただきました

対する大和(奈良)は、ヤマト王権の拠点であり、古代日本の中枢です。展示は古代の刀や埴輪、そして三角縁神獣鏡も。ワクワクしますね。

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大寺薬師の広目天。展示では4体そろって展示されるそうです!(大寺薬師収蔵庫にて許可を得て筆者撮影)

そして仏像もすごい。
まず出雲の仏像は、別の連載でも紹介した大寺薬師の四天王。これほんとカッコいいんですよ。2m近い大きな木造で、量感たっぷりの力強い造形。平安時代の前期の作です。
大寺薬師のある地域は今は時が止まったような里の風景ですが、そこにこんなに立派な仏像があるというのがすごい。古代には、大和と出雲を結ぶ重要地点だったことが偲ばれます。
これまた歴史ロマンですね。

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仏像がある大寺駅前の風景。鉄道ファン目線でも魅力ある場所

大和の仏像は、まず当麻寺の四天王。日本で二番目に古い像で、貴重な白鳳期(飛鳥時代後期)の像です。
この後有名な阿修羅像などに採用される脱活乾漆造の像。当時最新のテクノロジーをいち早く採用して造られたもので、顔立ちもエキゾチック。海外の文化を積極的に取り入れていた大和朝廷の姿勢がうかがえます。
写真は、展覧会サイト(下記)に大きく出ています。

そして、日本最古といわれる謎の石仏が登場。
大和の拠点、三輪山から少し奥まったところにある石位寺の、《浮彫伝薬師三尊像》。腰かけたスタイルの倚像三体がバランスよく石に彫られていて、その立体感がすごい。そして古いのにこの保存状態のよさ。私も何度も石位寺には行っていますが、毎回おどろきます。
お寺のすぐ近くには鏡女王(藤原鎌足の妻)の墓や舒明天皇陵があって、この地域も古代史ロマンあふれまっくてます。

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石位寺から見える風景。古代ロマンが止まらない

ちなみに、なぜ出雲と大和なのかというと、資料によると、出雲は大国主命(オオクニヌシ)が「幽」の世界を司り、大和は「顕」の世界を司るとあります。「幽」とは人間世界を超えた神々の世界、「顕」とは現実世界や政治の世界であり、両者一対となって日本の国がかたち造られていった、というようなコンセプトです。

来年2020年は『日本書紀』編纂から1300年の記念年でもありまして。
オリンピックで世界から注目される年に、日本の原点を問うというのは意義あることかと思います。

そんな、古代日本のいちばん濃いところを一挙に紹介してもらえる「出雲と大和」展。今から楽しみです。


日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」
東京国立博物館 平成館
2020年1月15日(水)−3月8日(日)
詳細は公式サイト
https://izumo-yamato2020.jp/
posted by 宮澤やすみ at 11:44 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月08日

担当はストーンズファン?キャラ立ちが楽しい大報恩寺展

トーハクで開催「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展が始まりました。
写真は報道内覧会での取材風景です。

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なんと秘仏本尊の釈迦如来もお出まし!

京都で応仁の乱にも焼けず残った大報恩寺。別名は千本釈迦堂。
仏像好きなら京都でぜったいはずせないお寺です。
快慶、定慶(肥後定慶)という、慶派のスターが腕をふるった仏像群が、東京にお出ましになりました。

まずはともかく、今回は図録のカバーデザインがすばらしいです。
カバーに、主役の仏像たちの顔、顔!
顔立ちだけでも、一人一人の個性が見えてくるようです。

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このデザイン、どこかで見たような・・・?

これを見ると、このバンドの絵面を思い出します。

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ローリング・ストーンズのアルバム『Black and Blue』

想像ですけど、図録のデザイン担当者は、ローリング・ストーンズのファンなんですかね。話が合いそうです。

ちなみに、ミック・ジャガーの位置で正面を向いているのは「神通第一」と称される目犍連(もっけんれん)さんです。
どちらの写真も、メンバー一人ひとりの際立つ個性を、一枚で表現した珠玉の写真です。

で、このおじさんたちの写真は、有名な快慶作の十大弟子というもので、たんなるおじさんの群像(笑)と思ったら大間違い。
釈迦の直属の高弟とされ、それぞれキャラが立ってます。
一人ひとりが独自の能力を発揮する超人なのだ!(詳しくは展示をご覧あれ)

続いて、美しい六観音が登場。肥後定慶という仏師の作。
いまから約800年前、鎌倉時代、有名な運慶の後を担う慶派仏師のスターが造りました。

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仏像ファン垂涎の六観音

よく慶派の仏像は写実的と評され、この像もそうなんですが、よく見ると、この鎌倉時代よりさらに300年以上さかのぼる、平安時代前期の古仏に寄せて作られているようにも感じます。
以前、「仁和寺展」で見た、道明寺の十一面観音像(この連載でも書きました)のような、うねるようなドレープの衣の表現が、大報恩寺の六観音の衣にも見られるんじゃないでしょうか。
一番特徴的なのは、十一面観音のスネのあたりです。
その部分の衣文の襞が、太い襞、細い襞と交互に表現されていて、これってまさに平安時代初期の様式じゃないですか(「翻波式衣文」といいます)。
写真掲載できないので、ぜひ展示室で確認ください!

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こちらは千手観音の横から姿

ぼくのような天平〜平安初期の古仏ファンは、「翻波式衣文」が大好物。
室生寺とかに行くと観られる様式です。
肥後定慶さん、こうした仏像の古典をちゃんと勉強しているんですね。
パクリとかマネなんかじゃなく、これこそ「リスペクト」というものです。


ところで、本展の関連イベントとして、「JAZZと声明の調べ」など音楽イベントがあるそうですが、
なんでこういうときに我々The Buttzを呼ばない〜!
せっかく仏像バンドという活動をしているのですから、こういう時はぜひ呼んでほしいなあ。アコースティック編成も可能ですし。
今後仏像寺社系イベントをご担当される方、よろしくお願いいたします!


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特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
2018年10月2日(火) 〜 2018年12月9日(日)
東京国立博物館 平成館 特別展示室第3室・第4室
公式サイト
https://artexhibition.jp/kaikei-jokei2018/


※この記事は、仏像ワールドWEBサイトでの連載「宮澤やすみの仏像ブツブツ」の記事を転載しています。


posted by 宮澤やすみ at 12:43 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月19日

仏像展示の集大成「仁和寺と御室派のみほとけ」展

東京国立博物館の「仁和寺と御室派」展。
筆者の専門にちょうど重なる領域であり、取材と紹介にも力が入ります。
こちらのサイトに連続で記事掲載されていますので、好きなところからご覧ください。特別に撮影した写真や動画があります。

「撮りたい欲」を解放! 仁和寺展の観音堂再現
 https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180120-2/

秘仏を間近で!「仁和寺と御室派展」
 https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180127-2/

秘仏かつ古仏、その魅力を存分に!「仁和寺と御室派展」
 https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180203-2/

葛井寺の千手観音、東京に光臨
 https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180217-2/


歴史ファンも、古仏ファンも、秘仏好きも、慶派マニアも、誰もが「これはすごい」となる稀有な展示ですよ!

 


posted by 宮澤やすみ at 12:15 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月10日

気分は仏像同窓会!?「運慶展」

東京国立博物館の特別展「運慶」を取材してきました。
なにしろ運慶と慶派の有名な仏像が、あれもこれもギュッと一堂に。
なかなかの仏像パーティぶりでした。
仏像ファンなら必須の展示かと思います。

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無著さんと世親さんに歓迎されて、仏像パーティに招かれた気分

クライマックスは奈良・興福寺の諸像。

現在、興福寺の南円堂にある四天王は、もとは北円堂にあったとされるそうで、
展示では、北円堂の有名な像である無著と世親の両像といっしょに配置され、往時の北円堂の内陣を再現しています。

この、無著さんと世親さんのお二人、やはり素晴らしいですね。
四天王や菩薩のような派手さは一切無いものの、その圧倒的な存在感に改めて感動しました。
写真やネットでよく見る像ですが、やはり実物の感覚はぜんぜんちがいますね。

展示はまず「運慶のデビュー作」といわれる円成寺・大日如来から始まります。
20代の運慶が「やったるでぇ〜!」とがんばって造り上げた仏像。その気持ちに共感し、私はこの像をイメージした仏像ソング"Great Sunshine Boy"という歌を歌っています。
展示はそこから伊豆と横須賀の名作、願成就院と浄楽寺の仏像が並びます。私はこの両寺には何度となく訪問。母校である横須賀高校在学のとき、浄楽寺近くに友人が住んでいたこともあり、とてもなじみのあるお寺です。
そんななじみ深いお寺の仏像がこんな晴れ舞台に登場するなんて、なにかこう、地元の仲間がスターになったような誇らしげな気持ちになります。

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運慶作と目される興福寺の仏頭も独特の存在感

運慶ファミリーの作も展示。

運慶の父・康慶作、奈良の長岳寺の阿弥陀三尊は、玉眼を使った最初期の例として有名。お寺では暗い中で少し離れた位置からの拝観ですが、ここでは間近に拝めます。

運慶の子・康弁作、怪獣っぽい風貌だけどカワイイ天燈鬼、龍燈鬼は、展示の最後でお出迎えしてくれます。

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高野山から八大童子も東京出張(運慶作の6体のみ)


写真や旅先で何度も会ってきた仏像ばかりですが、こうして一堂に集まって再会を楽しむのもいいですね。
まさに気分は仏像同窓会。
「やあひさしぶり!」「最近どうしてた〜?」なんて会話が聞こえてくるよう(ハイ完全に妄想でございます)。

展示替えもあるので、また行ってみたい、今年最大の仏像展だと思います。

ちなみに、グッズ売り場では、「十二神将ジオラマ」が異彩を放っていました。
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特別展「運慶」
2017年9月26日(火)〜11月26日(日)
月曜休館(10/9は開館)
東京国立博物館「平成館」にて
公式サイト
http://unkei2017.jp
 
posted by 宮澤やすみ at 02:03 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする