2017年06月06日

面白怖い世界へ!ブリューゲル「バベルの塔」展

中学生のころ、美術の教科書で「なにこの壮大な世界観」とインパクトを受けたのが「バベルの塔」。

謎めく旧約聖書の伝説がリアルに描かれ、絵の世界に引き込まれる。
脳内に流れるBGMは「バビル2世」(笑)

・・・そんな記憶をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

いつか実物を見てみたい、という思いが、21世紀の今実現しました。
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報道内覧会で許可を得て撮影。取材陣も興奮

展示室では、まず実物を見る前のアプローチに、細かい見どころの解説があり、心の準備を固めるようになっています。
実物がわりと小さいので、混雑緩和のためにいろいろ工夫しているようです。展示室奥には、東京芸術大学制作の高精細レプリカ(クローンアート)があり、これがかなり大きいサイズなので微細な箇所を確認したい場合はこちらを見るのをおすすめします。

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展示室へのアプローチ演出がニクい

また、暗い中で微細な描写を凝視するので、筆者含め中高年の弱った視力にはなかなか厳しい状況。メガネの手入れや単眼鏡などあると良いかと思います。ただし長時間絵の前に立つのは迷惑になってしまうので、ほどほどにお願いします。

展示の全体は、ブリューゲルを楽しむ前に、まず御大・ヒエロニムス・ボスの作品が登場。
ボスといえば、奇怪なモンスターが画面狭しと跋扈する、カオスな絵が面白いですよね。筆者も、中学生時代にCeltic Frostというヘヴィメタルバンドのアルバムジャケットに使われているのを見ていっぺんに好きになりました。

今回は、貴重なボスの真筆のうち2点が展示。ここでも細かいモチーフの解説が充実していて、面白い個所を見落としません。殺され吊るし上げられたクマ、背後にあばれる怪獣が大変不気味でワクワクします。
なにしろ、ボスのような面白怖い作品は、妖怪好きな日本人の感性に合うんじゃないでしょうか。

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解説より”猟師に射殺され、気に吊される熊は、「迫り来る危機」が去ったことを表している”

ボスの絵は当時も大変人気で、彼の死後もボス工房で「ボス風絵画」がさかんに描かれました。そんな「ボス・リバイバル」も本展のみどころのひとつです。

そのへんの見どころは、公式サイトに大きく出ています
 ↓
 http://babel2017.jp/point-anime.html

そして最後は、メインの「バベルの塔」をじっくりとご堪能ください!

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ショップの注目は、バベルの塔(Tower of Babel)ならぬ、今治「タオルの塔(Towel of Babel)」


ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝 ― ボスを超えて ―

(東京展)
2017年4月18日(火)〜7月2日(日)
月曜休館
東京都美術館 企画展示室にて
http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_babel.html
(大阪展は7月18日から国立国際美術館)
公式サイト:
http://babel2017.jp

posted by 宮澤やすみ at 19:27 | Comment(0) | ヨーロッパ(中世、ルネサンス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月12日

「ボッティチェリとルネサンス展」アーティストとパトロンの運命

渋谷Bunkamuraミュージアムの「ボッティチェリとルネサンス展」を取材してきました。
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影。会期中は撮影禁止です)

今回の展示は、副題が「フィレンツェの富と美」とついてまして、たんなる美術展じゃなく、博物館にいるような気分にもさせられます。

一言でいうと、ボッティチェリを軸に、15世紀イタリアの華麗で激しい人間ドラマが見える、興味深い内容でした。

展示は、時間軸に沿って、ボッティチェリの「イケイケ期」と「ダメダメ期」に分かれます。
(スミマセンぼくが勝手に便宜的につけた用語です)


1.イケイケ期

まず展示の最初は、フィレンツェで鋳造された金貨。
カトリック都市のフィレンツェ。メディチ家は、高利貸を禁ずるキリスト教義に反しない形で、うま〜いこと金融業を起ち上げて、財を成したそう。
さらに、財を成した人は積極的に芸術に投資するのが美徳とされたもの(現代のお金持ちさんもこの美徳に倣ってほしい・・・)ですから、一気に芸術の街として発展するのです。
そこで大活躍したのが、サンドロ・ボッティチェリさん。

展覧会では、師匠から独立したばかりの頃から晩年までのボッティチェリ作品がずらり。「ひとつの展覧会で、ボッティチェリ作品が17点!」というのは、かなり珍しいことなんだそうです。

メディチ家の潤沢な資金をもとに、ボッティチェリさんは、メディチ家から作品制作を数多く受注。仕事に恵まれたアーティストはいいですね。まさに水を得た魚です。早くから名声も手に入れました。

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ピアチェンツァ市立博物館の館長さんが、館唯一のボッティチェリ作品「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」について熱く語る。ボッティチェリ愛がひしひしと伝わりました。

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”イケイケ期”の代表作《ヴィーナスの誕生》があまりに人気で、ヴィーナスだけ別に描いた作品もある(ボッティチェリ工房作)。まさに人気絶頂。




2.ダメダメ期

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壁の色がブルーに変わり、”ダメダメ期”を演出する工夫

”ダメダメ”というのは、ボッティチェリの生活を指しての言葉で、画力についてはまったくダメではありません。むしろイケてます。

さて、この展覧会では、ボッティチェリをとりまくキーパーソンを把握するとよいです。
メディチ家の繁栄を築いたコジモ・デ・メディチ
2代目のロレンツォ・デ・メディチ
そして、聖職者ジローラモ・サヴォナローラ。

こうした人物が、15世紀イタリアの歴史を動かして、ボッティチェリも時代に翻弄されるという、歴史ドラマを見ているような展示が展開されるのです。

というのも、コジモさんが築いたメディチ家の権勢ですけど、次代になると早くも反動があって、暗殺騒ぎなんかが起きる(ロレンツォの弟が刺殺)。
さらに、聖職者のサヴォナローラさんがかなり癖のある人だったみたいで、華美な暮らしに浸る風潮を批判して、フィレンツェの民衆をカトリックの教義で扇動。町の広場で絵画を焼くという行動に出ました(「虚栄の焼却」と呼ばれた)。

で、この「いかがわしいアートなんかいか〜ん!!」というサヴォナローラさんの教えに、ボッティチェリも傾倒しまして、「虚栄の焼却」のときは自分で自分の絵を焼いたとか焼かなかったとか。

メディチ家が追放されるとき、ボッティチェリは付いていかず、サヴォナローラの教えに生きる決心をします。これで仕事が激減。仕事が無くなったアーティストは悲惨です(自分の体験ですが)。どんどん自分の世界に埋没して、精神的な深みに落ちていきます。

ボッティチェリさんの場合は、それが悪い方向にいかないで、精神的に静かな境地を得たようです。その点はサヴォナローラさんによるキリスト教の信仰によるのでしょう。

こうして、ボッティチェリの晩年の作品は、過去の”イケイケ期”とは異なる静かで深みのあるものに変化します。
とくに人物の静謐な表情とか、落ち着いた構図とか、老成したボッティチェリ作品の魅力があります。
だから、”ダメダメ”といっても、芸術性の面ではより高いレベルに到達しているといえるんじゃないでしょうか。

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引き込まれる画面の《聖母子と6人の天使》


とまあ、絵画自体よりもそれを取り巻くストーリーに着目した記事になってしまいましたが、それだけドラマを感じさせる展示構成になっているのが、特徴だと思います。絵画そのものの美しさや劇的な世界観は、ぜひ会場で存分に感じてください。イヤホンガイドもあってわかりやすく理解できますよ。
ルネサンスというと遠近法とかスフマートとか、絵画技法がクローズアップされがちですが、今回はより当時の人間の息遣いが感じられて、ボッティチェリとメディチ家が身近な存在になりました。



【ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美】
Bunkamuraザ・ミュージアム
2015/3/21(土・祝)−6/28(日) 
*4/13(月)、4/20(月)のみ休館
特設サイト 
http://botticelli2015.jp/

 

 





posted by 宮澤やすみ at 19:45 | Comment(0) | ヨーロッパ(中世、ルネサンス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月27日

「ルーヴル美術館展」で見たヒロイン

国立新美術館で開催されている「ルーヴル美術館展」取材してきました。
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影。ふだんは撮影禁止です)

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パリのルーヴル美術館は考古から近現代までものすごい量の所蔵品がありますが、今回は「風俗画」が主題だそうで、貴族から庶民、ホームレスまであらゆる人たちの日常を描いた絵画作品がならびます(冒頭に古代ギリシャの壺があるけど、そこに描かれるのも日常風景)。

ぼくが好きなフランドル絵画に近い路線もあり、《両替商とその妻》(クエンティン・マセイス)とかブリューゲルの《物乞い達》なんかが気になってました。

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しかし、現場で一番印象に残ったのは、可憐な少女を描いた《割れた水瓶》でした。

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ジャン=バティスト・グルーズ《割れた水瓶》1771年
Photo©RMN-Grand Palais(musée du Louvre)/Michel Urtado/ distributed by AMF - DNPartcom


まあ最初はね、ピンクの乳首が見えちゃってるソフトエロ路線に注目しちゃったんですけどね、男子の本能なんでスミマセンね。

乱れた着衣、右手にもつ割れた水瓶、これは乱暴された直後の様子。処女喪失の現場であります。
時代はフランス革命直前、フランス貴族文化の爛熟期。かなり奔放な恋愛模様が繰り広げられていたそうです。
そんな大人たちの風潮で、こうなっちゃったんでしょうね。時代ですね。
解説では、涙をうかべた目とかそういう言葉がありましたが、そんなふうには見えなかったです。ことさら哀しみや絶望感などを煽った感じはありませんでした。ただ、透き通るような白い肌、あどけない少女の顔、幼さが残る乳房という純粋に美しいものが、今この時大切なものを失ったんだよ、あなたどう思う?と鑑賞者に投げかけられる感じがします。見る人によって、とくに男女によって、感想が変わってくるように思います。

ほかにも、有名なフェルメールの作品や、ティツィアーノの《鏡の前の女》(背後の鏡に注目!)も見ごたえあります。

で、買ったグッズはやっぱりこの《割れた水瓶》の女の子。しかしバラをあしらったデザインが女子力100%でね(笑)どこで使おうかな。
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【ルーヴル美術館展】
日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
2015年2月21日(土)〜6月1日(月)
六本木・国立新美術館 企画展示室1E
http://www.ntv.co.jp/louvre2015/
 
 
 
posted by 宮澤やすみ at 14:10 | Comment(0) | ヨーロッパ(中世、ルネサンス) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする