2017年08月22日

たのしい地獄へ!「地獄絵ワンダーランド」展

暑い夏にスパイシーなカレーが食べたくなるように、夏は熱い地獄の絵を楽しむのがいいですね。
東京日本橋・三井記念美術館の「地獄絵ワンダーランド」展を取材してきました。

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地獄あれこれ、各種取り揃えてます!

やっぱりイチ押しは、後期展示のヘタウマ地獄絵ですね。

大きな掛け軸に地獄の王と獄卒、亡者、そのどれもがイイ感じに力が抜けて、マンガのような顔。
とくに亡者はヘナっとした顔が良い(笑)
なんだか、さくらももこのマンガエッセイに出てきそうな、ちびまる子ちゃんと一緒に夢の中で遊んでいそうな感じの、のほほんとしたお顔です。

その画像は、美術展サイトの「展示室7」をご覧ください。
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

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閻魔王と随神の像。このほか閻魔大王の前身である、密教の閻魔天の図像が興味深かったです

江戸時代は、神仏が庶民に浸透し、その結果かなり身近なものになり、だから冗談まじりの作品も登場します。

筆者は三味線を弾いて歌う「小唄」の師範ですが、小唄にも「お釈迦さん」という釈迦降誕会(灌仏会、花祭り)を歌った作品があります。
その歌詞は、
”賽銭箱にけっつまづいて甘茶の中へと落っこったぁ〜”
と、赤ん坊姿のお釈迦さんを(良い意味で)小バカにした歌です。

ほかにも、風神雷神が吉原へ繰り出して大騒ぎという唄もあったり。
神仏を歌う小唄はだいたいナンセンスなものばかり。

つまり、江戸時代には神仏はそれだけ身近で、信心深さを建前にしながら、実際は友達扱いしてしまうような付き合いだったようです。

だから、地獄絵の方向性も、怖がらせるよりも楽しんじゃう感じがウケたんじゃないでしょうか。


仏像ファン目線では、仏の世界の階層が理解できて面白いです。
よく言われる「六道」(人間が輪廻を繰り返す6層の世界)があり、その上に仏の世界が「須弥山」という大きな山で表現される。
四天王などの天部はその山の中腹にいて、人間世界を監視したりしている。山の頂上忉利天は、帝釈天の居城「喜見城」がある。その上空はホトケの世界で、弥勒菩薩のいる兜率天などいろんな階層が存在。

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須弥山を描いた大パネルがわかりやすい。喜見城の部分を接写


今回のテーマである地獄は、山の下にある人間世界から、さらに地下深くへ潜ります。
地下と言っても、デパートみたいに地下2階食品売場でお惣菜買って帰るのとはわけがちがいます。

地獄にも八層あるそうですが、地下8階「無間地獄」へは、ひたすら下へ降りていくこと実に2000年間!
2000年かけてやっとフロアに到着して、そこから地獄の責め苦が永遠に続くのです。気の短い人は到着するまでに気が狂ってしまいそう。


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木喰作の像も楽しいです。前列左の葬頭河婆(奪衣婆)は三途の川で衣をはぎ取る「地獄の受付嬢(婆)」


一人でも楽しめるし、仲間とワイワイ言いながら観て歩きたい展示です。



特別展「地獄絵ワンダーランド」
(東京展)
2017年7月15日(土)〜9月3日(日)
月曜休館
三井記念美術館にて
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
(京都展は9月23日から龍谷ミュージアム)



posted by 宮澤やすみ at 17:46 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月24日

楽茶碗はアバンギャルドの極致?『茶碗の中の宇宙』展

茶道で用いられる楽茶碗が勢ぞろいした『茶碗の中の宇宙−楽家一子相伝の芸術』。
現在の15代楽吉左エ門さんご本人も登場しての内覧会は、静かな興奮に包まれてました。

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囲み取材を受ける樂吉左エ門さん

初代・長次郎から代々続く樂家ですが、先代の技術を模倣することはなく、土も釉薬も自分で研究し、独自の茶碗づくりをするのが特徴です。
今回の展示は、15代すべての作品が並んでいて、代ごとにスタイルが変わっていく様子がよくわかります。

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三代目・道入作、銘《青山》。初代の作風よりも艶やかでオシャレ

自分は以前、初代・長次郎の茶碗を手に取らせてもらったことがあります。見た目よりも非常に軽く、薄くてもろいようで、でもかっしり引き締まってる。見込み(内側のお茶の入る部分)を見るとブラックホールのように深い。枯れた色調もあって、年季を積んでも矍鑠と元気なおじいちゃん、という印象でした。

今でこそ、楽茶碗というと渋好みの侘びた風情という印象ですが、しかし、もともとのコンセプトはどうやら違ったようです。

初代・長次郎のいた桃山時代は、なんでもかんでも金ピカにするのが流行り。そこに、黒と赤だけのゆがんだ茶碗を使うというのは、相当異質な美だったでしょう。
千利休が楽長次郎に指示した茶碗のコンセプトは、かなりのアバンギャルド。
利休も、それに応えた楽も、日本美術界のとんだパンク野郎(笑)だったのですね。
美術界に殴り込んだ”反逆のアート”が楽茶碗なのです。なんだかカッコいい。パンクロックを爆音で流しながらお茶を飲みたくなります。

当初は、「樂焼」という言葉もなく、「今焼」と呼ばれていたそう。
要するに、あまりに斬新すぎて名称がつけられず、桃山時代当時のコンテンポラリー・アートと位置づけられたのでした。その後、江戸から明治に時代が移っても、時代の空気を反映した”今様の美”を追求してきたことは変わりありません。
そう考えると、この記事のカテゴリを「現代美術」にしてもいいかもしれませんね(笑)

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当代・吉左エ門さんの作品もたくさん。”これ、どこから飲むの?”というような面白い作品がたくさんありますよ


『茶碗の中の宇宙−楽家一子相伝の芸術』
3/14〜5/21
東京国立近代美術館にて
休館日、開館時間などの詳細は
http://raku2016-17.jp/outline.html
展覧会サイト
http://raku2016-17.jp/
posted by 宮澤やすみ at 14:16 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月07日

貴族にお呼ばれ? バロン住友の美的生活-美の夢は終わらない

六本木アークヒルズにある泉屋博古館分館にて「数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ」展の内覧会へ行ってきました。
(写真は許可を得て撮影)

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”オールスター!茶入大感謝祭”(笑)

ここは、財閥・住友家が集めた美術品を集めた美術館で、本館は京都にあります。
住友家第15代当主、住友春翠さんは公家から住友家に入ったお方。通称「バロン住友」。美術の収集や美術家の育成にも力を入れたそうで、西洋東洋の美術品のほか、中国青銅器のコレクションが特筆されます。

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「バロン住友」こと住友春翠氏の肖像

その収集品をご紹介しようというのがこの美術展で、前回の第一部(西洋美術)につづき、今回は和の美。
軸もの、屏風も立派でしたが、私としてはやっぱり茶道具に目が行きました。

西洋美術好きの春翠さんがお茶に凝ったのは、50代以降のことだそうですが、小堀遠州の好む「きれいさび」の世界がお好みのようで、小ぶりでかわいい品が並んでました。
現代で言うと、女子好みというか、キュンとくるというか(笑)、そんなイメージなんですかね…。

井戸茶碗には、国宝にもなるくらい威厳のあるフォルムがよくありますが、ここにある《小井戸茶碗 銘「六地蔵」》なんか、かわいいですよ。広がりをちいさくまとめて、その分深さがあり、側面の釉薬の模様がちょぼちょぼついて、全体的になんとも上品、かろやか。やっぱり貴族の方はこういうのがお好みなんですね〜。

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大きな画像は自粛。美術館のサイトできれいな画像が見られます

その横には、表面がざらついた《黄伊羅保(きいらぼ)茶碗》というのがあり、説明によると、
”伊羅保の名は、その手触りがいらいらするところからつけられたとも”
おいおい笑。そんな由来! イライラするって!!笑
思わず、いとうあさこの朝倉南のネタが思い浮かんだ次第です。

※井戸茶碗については、当サイト前記事参照ください。
 「国宝・曜変天目茶碗と日本の美展」

茶入れは名物のコピーがずらり(冒頭写真)。茶入れは、その形によって「文琳」(リンゴのこと)とか、「阿古陀」(かぼちゃのこと)とか、「茄子」とか呼び方があるんですが、その典型例が並んで、とてもわかりやすいです!

ほかにも、写真は載せないけど、釉薬の景色がうつくしい茶入の名品や茶碗。そうかと思えば、比叡山延暦寺で使っていたという重厚武骨な茶釜だけは男性的な存在感がありました。

なんだか、バロン住友さんの人となりを(勝手に)想像しちゃいますね。女性的で上品な路線が多いとはいえ、ナヨナヨした感じは無いのであります。

さらには、ディナーセットや、邸宅の写真などもあって、
は〜貴族のくらし、ステキですワねえ〜
と、なぜかマダム口調でうっとりしちゃうひと時でありました。

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旧邸のふすまの意匠図。モダンだなーと思いきや、法隆寺伝来の古代裂文様。は〜もうどこまでもオシャレ

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実際に使っていたディナーセット。「ダウントン・アビー」の世界だね

さらに、後期展示では、いま大ブレイク中(?)の伊藤若冲の絵も展示されますよ。
ここは5時間も並びませんよ(笑)!

帰りはアークヒルズでゆっくりお茶して帰りたい気分になります。私はこの日頭痛がひどかったのですぐ帰りましたが。

さて、貴族のコレクションを自宅(跡地)で公開という、「邸宅美術館」は各地にあります。
当サイトでもミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展を取材しました。
 結局ルネサンスって何? ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展

あの展示は、膨大な展示物が時代別に体系づけて整理されて展示していて、個人コレクションと思えない充実ぶりでした。
今回は、正直言ってそこまで体系だった展示ではなく、良くも悪くも「住友さんのお宅のお宝拝見」という感じになっています。
まあ、博物館ではないので、これで充分楽しめるものではありますけどね。(いつか充実の青銅器コレクションを見てみたい)
気楽なおでかけの時にふらっと楽しむにはよいと思います。

ちょっとイイとこのお家にお呼ばれされた気分で、訪ねてみては。

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都心と思えない静けさ


住友春翠生誕150年記念特別展
バロン住友の美的生活 ―美の夢は終わらない。
第2部 数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ

2016年 6月4日(土)〜8月5日(金)
(7月5日より展示替え)
泉屋博古館分館にて
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/information.html
 

posted by 宮澤やすみ at 18:42 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする