2016年06月07日

貴族にお呼ばれ? バロン住友の美的生活-美の夢は終わらない

六本木アークヒルズにある泉屋博古館分館にて「数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ」展の内覧会へ行ってきました。
(写真は許可を得て撮影)

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”オールスター!茶入大感謝祭”(笑)

ここは、財閥・住友家が集めた美術品を集めた美術館で、本館は京都にあります。
住友家第15代当主、住友春翠さんは公家から住友家に入ったお方。通称「バロン住友」。美術の収集や美術家の育成にも力を入れたそうで、西洋東洋の美術品のほか、中国青銅器のコレクションが特筆されます。

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「バロン住友」こと住友春翠氏の肖像

その収集品をご紹介しようというのがこの美術展で、前回の第一部(西洋美術)につづき、今回は和の美。
軸もの、屏風も立派でしたが、私としてはやっぱり茶道具に目が行きました。

西洋美術好きの春翠さんがお茶に凝ったのは、50代以降のことだそうですが、小堀遠州の好む「きれいさび」の世界がお好みのようで、小ぶりでかわいい品が並んでました。
現代で言うと、女子好みというか、キュンとくるというか(笑)、そんなイメージなんですかね…。

井戸茶碗には、国宝にもなるくらい威厳のあるフォルムがよくありますが、ここにある《小井戸茶碗 銘「六地蔵」》なんか、かわいいですよ。広がりをちいさくまとめて、その分深さがあり、側面の釉薬の模様がちょぼちょぼついて、全体的になんとも上品、かろやか。やっぱり貴族の方はこういうのがお好みなんですね〜。

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大きな画像は自粛。美術館のサイトできれいな画像が見られます

その横には、表面がざらついた《黄伊羅保(きいらぼ)茶碗》というのがあり、説明によると、
”伊羅保の名は、その手触りがいらいらするところからつけられたとも”
おいおい笑。そんな由来! イライラするって!!笑
思わず、いとうあさこの朝倉南のネタが思い浮かんだ次第です。

※井戸茶碗については、当サイト前記事参照ください。
 「国宝・曜変天目茶碗と日本の美展」

茶入れは名物のコピーがずらり(冒頭写真)。茶入れは、その形によって「文琳」(リンゴのこと)とか、「阿古陀」(かぼちゃのこと)とか、「茄子」とか呼び方があるんですが、その典型例が並んで、とてもわかりやすいです!

ほかにも、写真は載せないけど、釉薬の景色がうつくしい茶入の名品や茶碗。そうかと思えば、比叡山延暦寺で使っていたという重厚武骨な茶釜だけは男性的な存在感がありました。

なんだか、バロン住友さんの人となりを(勝手に)想像しちゃいますね。女性的で上品な路線が多いとはいえ、ナヨナヨした感じは無いのであります。

さらには、ディナーセットや、邸宅の写真などもあって、
は〜貴族のくらし、ステキですワねえ〜
と、なぜかマダム口調でうっとりしちゃうひと時でありました。

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旧邸のふすまの意匠図。モダンだなーと思いきや、法隆寺伝来の古代裂文様。は〜もうどこまでもオシャレ

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実際に使っていたディナーセット。「ダウントン・アビー」の世界だね

さらに、後期展示では、いま大ブレイク中(?)の伊藤若冲の絵も展示されますよ。
ここは5時間も並びませんよ(笑)!

帰りはアークヒルズでゆっくりお茶して帰りたい気分になります。私はこの日頭痛がひどかったのですぐ帰りましたが。

さて、貴族のコレクションを自宅(跡地)で公開という、「邸宅美術館」は各地にあります。
当サイトでもミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展を取材しました。
 結局ルネサンスって何? ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館展

あの展示は、膨大な展示物が時代別に体系づけて整理されて展示していて、個人コレクションと思えない充実ぶりでした。
今回は、正直言ってそこまで体系だった展示ではなく、良くも悪くも「住友さんのお宅のお宝拝見」という感じになっています。
まあ、博物館ではないので、これで充分楽しめるものではありますけどね。(いつか充実の青銅器コレクションを見てみたい)
気楽なおでかけの時にふらっと楽しむにはよいと思います。

ちょっとイイとこのお家にお呼ばれされた気分で、訪ねてみては。

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都心と思えない静けさ


住友春翠生誕150年記念特別展
バロン住友の美的生活 ―美の夢は終わらない。
第2部 数寄者住友春翠 ―和の美を愉しむ

2016年 6月4日(土)〜8月5日(金)
(7月5日より展示替え)
泉屋博古館分館にて
http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/information.html
 

posted by 宮澤やすみ at 18:42 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

痛快”くにくに”−俺たちの国芳 わたしの国貞展

ちょっと遅くなりましたが、行ってきました「国芳、国貞」展。
なにか、今までの浮世絵展とはかなり趣がちがっていて、かなり楽しめました。

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なんといっても、展示に添えられる言葉の表現がどれもキャッチ―。
漢字の羅列を、カタカナで読み替える。たとえば、

 物怪退治英雄譚
という表記の上に、
 モンスターハンター&ヒーロー

とルビを振るのです。
すべての展示コーナーで、一貫してこの調子だから、次第にアニメの原画展とかコミケにでも来たような、このサイトで言うと「メカニック・デザイナー大河原邦男展」を観た時と似たような感覚になりました。
描かれた幻想世界や、美人やヒーローの世界に入り込んで、ワクワクドキドキ。むずかしいこと抜きでとにかく楽しめる展示でしたね。

今回は内覧会に行けず、撮影できなかったので、展覧会サイトの絵をご覧ください。
http://www.ntv.co.jp/kunikuni/works/
・ワルな男衆の派手姿
・大胆な構図で描かれた幻想世界
・ストップモーションで切り取る武者絵
・人気スターのブロマイド的美人画
・スター集結の激レア舞台裏風景

などなど、興味を引く内容ばかり。役者絵なんかも、よくありがちな「引き目、かぎ鼻」の顔じゃなく、ギョロッと開いた大きな目とか、けっこうリアルに描いてるのが、新鮮な印象です。

なにしろ、絵そのものの面白さにグッと引き込まれる展示方法が好感もてました。

ふつう、展覧会だと、作家そのものの生涯とか生き様とか時代とかそういう、作品外の情報が多いものですが(それはそれで欲しい情報ではあります)、今回は、国芳国貞という人物情報よりも、その絵に描かれた対象のほうに興味がいきます。まず見たかったのは作品であり、作家のことは後で知ればよいという順番。

私が仏像が好きだというのも、その理由のひとつは、作者不詳の像が多く、そのぶん余計な情報抜きで、作品そのものに集中できるから、ということもあると思います。

今回も、国芳は漢(おとこ)のカッコよさを描き、国貞は役者の個性を上手に引き出す、といった「情報」はありますが、観ているほうは割とそういうのどうでもよくて(笑)、ドクロすげ〜とか、仮面ライダーと同じだよね〜wとか、絵そのもので充分楽しめちゃうのです。

浮世絵に限らず、作品に対する本来の接し方みたいなものを考えさせられる展覧会でした。


ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞
2016/3/19(土)〜6/5(日)
Bunkamura ザ・ミュージアムにて
美術館サイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/16_kuniyoshi/
総合サイト
http://www.ntv.co.jp/kunikuni/

(追記)
好評のため、会期最終週は閉館時刻の延長が決定しました!
5月29日(日)〜6月2日(木)は20:00まで延長
(6月3日(金)・4日(土)は21:00まで、5日(日)は19:00までの通常開館です。)
 


posted by 宮澤やすみ at 17:36 | Comment(0) | 日本(中世-近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月27日

観音の里の祈りとくらし展U−びわ湖・長浜のホトケたち−

2014年に開かれた、「観音の里の祈りとくらし展」ですが、なんと今年2016年、第二弾が開催されます。
先日、記者発表がありました。
展覧会が”第二弾”を出すというのは珍しいです。それだけ人気が高かったのでしょう。

琵琶湖の東北岸地域は、古くから天台宗の信仰に基づく観音信仰がさかんで、今でも平安時代の貴重で美麗な古仏がたくさん残されています。
そのどれもが、地域の人たちの手で管理され、地元の祭りや他県からの観光にもちゃんと対応しているところが特徴です。
観光バスで大挙して行くのもいいけど、レンタサイクルで気ままに行くのもいいものです。

そんな「奥びわ湖」の観音展。今回の主役は、木之本町・黒田観音寺のハンサム観音菩薩が登場。
この切れ長の眼がいいですね。

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今回のポスター画像です

ほかにも、
--長浜の庶民信仰をなす重要文化財約10駆を
含む40を超える仏様をはじめ、観音の里に伝わる大切な古文書なども
併せて出展。長い歴史の中で守り継がれてきた地域に息づく信仰のこころ
を発信してまいります--
とのこと。

7月5日からの展示が楽しみですね!

(展示概要)
会期:2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
午前10時 - 午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(ただし、7月18日は開館)、7月19日
会場:東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3
観覧料: 未定
主催:東京藝術大学、長浜市
■美術館のサイト
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm



■アートウォッチャーサイトでの、2014年の展覧会記事:
http://artwatcher.seesaa.net/article/417186414.html
 
 
posted by 宮澤やすみ at 21:11 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月15日

巨大秘仏が東京で公開 −擽野寺の大観音とみほとけたち−

擽野寺の巨大秘仏が東博に来る!というので、記者発表会に行ってきました。

このお寺の本尊は、台座光背を含めた総高が5mを超え、しかも一木造(頭から同体)という大迫力の観音坐像です。
観音坐像としては国内最大といいます。
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それに加えて、お寺安置の仏像合計20体、一挙公開。
2mを超える薬師如来や、西国にはめずらしい鉈彫り仏、毘沙門天に吉祥天などなど、とてもヴァリエーション豊かで見ごたえありそうです。

この秋の仏像展としてとても注目される展示になると思います。
公式サイトも、大観音がどどーんと迫りくるデザインになってます。一度ご覧あれ。
  ↓↓
特別展 平安の秘仏−滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち
公式サイト
http://hibutsu2016.com/

会場
東京国立博物館 本館特別5室
会期
2016年9月13日(火)〜12月11日(日)
 
posted by 宮澤やすみ at 16:48 | Comment(0) | 日本(仏像、考古) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月06日

旅する気分で「風景画の誕生」展

Bunkamuraミュージアム「風景画の誕生」展がおもしろいです。
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影)

ぼくはもともとヒエロニムス・ボスの絵が好きだったので、この展覧会で出展される《楽園図》が楽しみでした。
そして、実物を見たときの感激はやはりいいものでした!
公式サイトのこのページ中間部あたりに絵が出ていますが、やっぱり実物で見たほうがいいと思います。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien/point.html

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左に写ってるのがそう。だけど実物を見ないとはじまらない

さて、「風景画」が主役の本展ですが、じつはヨーロッパの美術はまず”人体”が基本なんですよね。ミロのヴィーナスとか、古代ローマの彫刻なんかに代表される、解剖学的な人体の美ですね。
だから、美術作品で風景や自然を題材にするという考え方があまりなかったそうです。

しかし、古い絵画にも風景の美しさが見られます。それは人物の背景に描かれた精緻な風景。

平面画で、風景は描きにくいものだったようで、ずっと遠くまで茫洋とつづく奥行きをどう表現するかが問題。
数学的な遠近法が確立される以前、もしくは遠近法が使われないオランダあたりの絵画では、
「色彩遠近法」というやり方で奥行きを表現してました。
赤系の暖色は前に出て見え、青系の寒色は引っ込んで見える。この特性を利用して、遠くのものを青系の絵具で描いたんですね。
展覧会では、「世界で最初に風景画家と言われた男」パティニールの風景画が展示されています。

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色あいで遠近感を表現
ヨアヒム・パティニール《聖カタリナの車輪の奇跡》1515年以前 油彩・板


ほかに面白いのは、月暦画。
一年12か月のくらしを描いた大きな連作で、ヨーロッパの田舎のくらしぶりが見えて面白いです。
イタリア北部の農村で、ブドウを収穫したり、秋には子羊を締めたり(かわいい子羊だけど、仕方ない!)、絹糸をつむいだり。
画面が大きいので、素朴なくらしの中に入り込んだような気分になりますよ。

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月ごとの暮らしぶりが大画面に

こちらの展覧会サイトに画像が出ていますが、
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien/
「風景を旅する」というキャッチコピーのとおり、風景と共に、ヨーロッパのくらしを体験するような気持ちになるんですよね。

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風景の中に描かれた人々の生活がおもしろい
(部分)ルーカス・ファン・ファルケンボルフ《夏の風景(7月または8月)》1585年 油彩・キャンヴァスより



展示後半は、風景画というジャンルが確立してからの作品。もうね、画面のほとんどが雲!とかね(笑)
それでも、忠実にヨーロッパの街を描いていて、ヴェネツィアの港の描写なんかほんとリアルでした。カメラ・オブスキュラという機器で正確に建物の位置関係を測ったそうで、写真が普及する直前の、風景画の白眉です。

観終わったあとは、無性にヨーロッパの旅に行きたくなる!
行けなくても、「今日の晩ごはんは、フレンチかイタリアンにしようかな」と思うような(笑)、そんな展覧会です。


そして、この「風景画の誕生」展の公式サイトがおもしろいです!
絵画の画像にマウスをもってくと拡大したり、見やすくわかりやすく構成されているので、一度ご覧あれ。


ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生
2015/9/9(水)−12/7(月)
10/5(月)のみ休館
Bunkamura ミュージアムにて
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien/
美術館サイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien.html
posted by 宮澤やすみ at 17:32 | Comment(0) | ヨーロッパ(近代) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする